単語の暗記って、ツラい…
もっと効率的に覚える方法って無いんだろうか?
↑
僕も気になったので、ちょっと調べてみました。
というとも、最近英検1級の勉強をしていて、単語を暗記していたのですが、1級の単語は、どれも見たことなくて覚えづらいものばかり。
そんな時、ふとこう思ったのです。
日本人は漢字から言葉の意味を推測できるよな…
英語にもそういう機能って無いんだろうか。
いや、あるに違いない!そうじゃなかったら、あまりにも不便すぎる!
英語にも、日本人にとっての漢字、部首のような、「単語の意味を想起させるトリガー」があるはずだと思ったのです。
でなければ、あまりにも非効率的すぎると思いませんか?
そんなわけで注目したのがこちらこちらの「英単語の語源図鑑」です。
この本の著者、清水健二氏は40年以上英語を指導してきた、現役の高校の先生です。
その著者によれば、
最も効率的な英単語の覚え方は、語源学習によるものである
とのこと。
「語源学習」とは一体どのようなものなのでしょうか?
果たして本当に効率よく単語を覚える方法なんてあるのでしょうか。
詳しく見ていきたいと思います。
「語源学習法」とは?|効率的に英単語を覚えられる近道
語源学習法とは要するに、「英単語を、構成するパーツ=語源に分けて考える方法」のこと。
英単語を構成するパーツ(語源)は3種類あり、
「接頭辞」+「語根」+「接尾辞」
から構成されています↓
接頭辞 | 方向や位置関係・時間関係、強調・否定などを表す |
語根 | 単語の意味の中核 |
接尾辞 | 品詞を表す |
例えば、attraction(=魅力) という単語であれば、こんな感じです↓
attractionの意味の中核は「tract」で、もともとの語源は「引く」という意味なのです。
これに、at- =「の方へ」という『方向』と、-ion =「名詞」がくっいて、「その方向へ引き付けるもの=魅力」という意味になっているというわけです。
このように英単語は、それぞれ意味を持った「語源」で構成されており、この語源こそがネイティブにとっての『単語の意味を想起させるトリガー』になっているというわけです。
日本語の漢字でいうところの『部首』のようなものですね。
そして、英単語そのものの意味だけでなく、単語を構成する「語源」の意味をあらかじめ学習することで、効率よく単語が覚えられるようになるというのが、この本で提唱している「語源学習法」なのです。
この本のメリットその1:バラバラだった単語を関連づけて覚えられる
語源学習法の最大のメリットは、「単語を関連づけて覚えられる」ことです。
たとえば先ほど紹介した語根「tract=引く」であれば、
- at(の方へ) -tract(引く) -ion(名詞) Attraction=「魅力」
- con-(共に) -tract(引く) contract=「契約する」
- ex-(外に) -tract(引く) extract=「引き出す」
- dis-(離れて) -tract(引く) -ion(名詞) distraction=「気晴らし」
という風に、「-tract=引く」という語根を起点にして、同様のルーツを持つ単語を芋づる式に関連づけて覚えることができます。
ちなみにこれは、毎回いちどに関連する単語をまとめて覚えよう、という事ではなく、単語同士の親戚関係を理解することで、それぞれの単語を定着しやすくする、くらいに僕は捉えています。
まとめて覚えられたらもちろん良いのですが、一般的な単語帳は同じ語源でまとまったりしていないので、あんまり現実的では無いですよね。
新しく出会った難しくて馴染みづらい単語でも、よく知っている思わぬ単語と親戚だったりします。
それに気づくことができれば、もうなかなか忘れられなくなるでしょう。
この本のメリットその2:イラストがわかりやすい
また、この本のもう一つのメリットは、全ての語源・単語がイラストで解説されているところです。
改めて言っておきたいのは、単語の意味を覚えるということは、決して「英単語と日本語を対応させること」ではありません。
ドンピシャで当てはまる日本語が存在する単語ばかりではありません。
そうなると、英単語のもつイメージを把握することこそが、単語を覚える、ということなのです。
この本では全ての単語に、その単語が持つ「イメージ」がイラストで表されています。
このため、非常に効率よく、また強烈に記憶に残るかたちで単語を覚えることができます。
「語源図鑑」の構成
「語源図鑑」では、全部で
- 12パターンの接頭辞
- 103パターンの語根
を紹介しています。(接尾辞は意味ではなく「品詞」変えるだけで、覚えるほどでもないのでまとめられていません)
本の構成としてはまず全12チャプターで12個の接頭辞について、それぞれがもつ「イメージ」をわかりやすいイラストで紹介し、一緒にその接頭辞がつく代表的な単語をいくつか例示しています。
続いて、その接頭辞をもつ単語を5〜15個ほど紹介し(ここでは「survey」)、さらにその単語と同じ語根を持つ単語を関連づけて紹介しています↓
こんな感じで、 全部で12パターンの接頭辞と103パターンの語根を紹介しています。
えー!パターン多くない?
そんなに覚える方がむしろ非効率じゃない??
と思われるかもしれませんが、実際にはそこまで大変ではありません。
12パターンの「接頭辞」
まず「接頭辞」ですが、この本で紹介している12パターンのうちでも、com-(共に)や、 ex-(外に)、re-(再び)など、すでに皆さんにお馴染みなものも多く含まれます。
ですので接頭辞12パターンと言っても、ほとんど知っているものを復習する感じだと思います。
ただし、中には
- com- =完璧に
- re- =後ろに
- de- =下に
のように、広く知られた意味とは違う、あまり馴染みのない意味を持っている場合もあるので注意が必要です。
103パターンの「語根」
さて問題は103パターンと多い「語根」です。
先ほど書いたように、接頭辞や接尾辞がなんとなく知っているものが多いのに対し、語根は思わず「へぇ〜!」と唸ってしまうような、初めて知るものばかり。
確かに多いですが、それだけに覚えていて楽しいですし、これを覚えることで、英単語の意味をより鮮明にイメージできるようになることは間違いありません。
(ちなみに語根の中にもform=「形」や、cast=「投げる」のように、イメージしやすいものも多いです)
なんといってもイラストがミソ
このように、この本では使われる頻度の高い接頭辞と語根を紹介しているわけですが、上にも書いた通り、中にはちょっと分かりづらい、もっと言うと「納得のいかない」意味もあったりします。
例えばcontract なとは、
con=「共に」+ tract=「引く」→「引き合う」 → 「契約」ってどういうことやねん??
と思ってしまうわけですが、この本のイラストではこのように、2台のトラクターが結ばれて引き合っている様子が描かれています。
これにより文字づらだけでなく、「イメージ」として、語源の持つ意味を理解することができます。
若干こじつけ感が強いような気もしますが、一般的な語源辞典ですと、本当に日本語の「文字だけ」で説明してありますので、それに比べるとイラストで書かれている方が格段に腑に落ちやすくなっています。
実際のところ語源学習法はどのくらい役に立つの?
さて、単語を語源のパーツにわけて覚える語源学習ですが、実際にはどのくらい役に立つのでしょうか。
語源による学習は完璧ではない
もちろん、この世に存在する接頭辞や語根はこの本で紹介されているものだけではありません。
しかしそれらは使用される「頻度」が異なっており、よく使われるものもあれば、そうでないものもあるのです。
この本では、比較的、使用される頻度の高いものを厳選して紹介しているというわけです。
また、この本で紹介されているような語源の意味を覚えたからと言って、初見の単語の意味を完璧に推測できるようになるわけではありません。
たとえばde-という接頭辞には
- 下に
- 離れて
- 否定
- 完全に
という、一見似ているようにも見えて、「完全に」のような全然違う意味も含まれています。
これでは、初見の単語にde-が付いていたとしても、どの意味が当てはまるかは、推測のしようがありません。
また他にも、もともとの語源の持つ意味と、現在使われている単語の意味が長い歴史の中で変化してしまっているものもあります。
そうなると、現在の単語の意味と語源を見比べてもこじ付けにしか見えず、あまり記憶の役に立たないものも多いのも事実です。
語源によって学習できる単語は「全体の3分の2」
え〜それじゃあ語源を学んでもあんまり意味が無いんじゃないの?
だいいちい今まで中学・高校で語源学習なんて教えられてこなかったし、それでも沢山の単語を覚えてこれたよ?
↑と、思われるかもしれません。
これについては、法政大学文学部の中田達也准教授がこちらのサイトで非常に興味深いことを書いています。
中田氏によれば「語源の知識を活用して学習できる単語」は全体の3分の2程度だそうです。
その理由は次の通り↓
英語の語彙は、大きく分けて、①「ラテン語・ギリシア語起源の語彙」、②「その他の語彙」という2種類に分けることができます。語源の知識が役に立つ語彙の大部分は、①のグループに分類されるような英単語です。ここで、ある統計によると、ラテン語・ギリシア語起源の語彙は、英単語全体の約3分の2を占めていると言われています。
中略
生活に密着した基礎的な単語ほど②の単語が多く、知的・学術的・専門的な語彙になればなるほど、①に分類される単語の割合が多くなることが知られています。中学・高校で語源学習が強調されないのは、中学・高校で学習される語彙の多くが②に分類される語彙であり、語源学習のメリットがほとんどないという理由によります。皆さんが、今までに語源を意識することなく3,000~4,000語を習得できたというのも、まさにこの理由によります。
http://www.howtoeigo.net/nvoc6.html
これは非常に説得力がありますよね。
逆に言えば、私たちが学習する単語の3つに1つは語源のルールが当てはまらないということになりますが、知的で難しい、日常なじみの薄い単語ほど、語源学習のメリットが活かせるということなのです。
つまり語源による学習は、完璧ではありませんが、それでも単語を覚える効率が格段に上がることは間違い無いのです。
まとめ|完璧ではないが、かなり効率的に英単語が覚えられる
繰り返しになりますが、語源学習法は決して初見の単語の意味を完璧に言い当てられるようになるためのものではありません。
あくまで単語を覚える際に、語源も意識して覚えることで、記憶への引っかかり・定着を助けるためのものなのです。
僕は今、英検1級の単語を勉強しています。
一見長ったらしくて取っ付きにくい難単語も、確かに日本語の意味と語源を見比べてみると「なるほど〜!」と思わせてくれるものが多くあります。
ただやみくもに根性で難単語を丸暗記しようとするのではなく、そのウラにある「法則」を、まず一通り理解することで、その後の学習の効率がいっそう高まると感じました。
一見すると遠回りのようにも見える語源学習ですが、ぜひ一度読んでみることをオススメします!
ちなみに余談ですが、実はこれまでこういったいわゆる「ハウツー本」的な本にはあまり注目しておらず、この本も「初心者向けの簡単な単語を覚えるこざかしい裏ワザ的な本」だと思っていました。
でも実際に読んでみたら、非常に科学的で普遍的に使える知識が紹介されており、決してハウツー本なんかではありませんでした笑。やはり喰わず嫌いはよくないですね。
というわけで、ヒロポン(@E_Teki_2019)でした!
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